生態系生態学研究室

研究内容の紹介

本研究室では①様々な生態系における構造と機能②自然・人為的攪乱が生態系の構造と機能に与える影響に関する研究を行っています。その中でも現在、特に力を入れているのが以下の3つのトピックスです。これまで継続して行っている研究については、研究業績のページで紹介していますのでそちらをご覧ください (情報はこちらから)。

「バイオチャーによる生態系への炭素隔離技術の創出」:散布による森林生態系の応答機構の解明

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COP21において締結されたパリ協定の発効にともない、「バイオチャー」を用いた炭素隔離技術が革新的なCO2削減方策の一つとして注目されています。元々バイオチャーは、農地での作物収量の増加を目的とした土壌改良剤ですが、その付随的な効果として炭素隔離効果が議論されるようになりました。その中でも、私たちの研究グループは「森林」を対象に研究を行っています。森林は樹木による炭素固定能が高く、世界の陸域面積の約30%を占めるほど広大で、林内にバイオチャーへ加工するための有機物残渣 (枯死木や枯葉) を豊富に蓄えています。したがって、森林生態系をバイオチャーによる炭素隔離の場として活用することは、より現実的で効果的なCO2削減方策になると期待されます。私たちの研究グループは世界に先駆けてバイオチャーを森林に散布する大規模な研究を行ってきました。本庄サイト玉川サイトを拠点に研究を進めています。

「アクセラレーター生態学の創成」:物質循環における消費者の役割の解明

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これまで、炭素の循環は有機物の生産者である植物と分解者である土壌中の微生物を中心に炭素の貯蓄 (プール) と移動 (フラックス) を図示したコンパートメントモデルを利用し表現されてきました。しかし、これらのコンパートメントモデルには、私たちがよく目にする哺乳類や節足動物などの比較的大きな消費者は組み込まれていません。それは、一般的に単位面積あたりに存在する生物量が少なく影響が小さいと思われていたこと、また、存在量の空間的な不均一性が高く、生物量を推定することが困難であることが挙げられます。しかし、生物量が小さくともそれらの消費者は確実に存在し、摂取された有機物は消費者のバイオマスとなり、呼吸として大気へ帰り、糞として土壌へと供給されます。これらの消費者が直接摂取するようなものを炭素循環における消費者の直接効果と定義できます。また、この行動は、生食連鎖の観点に基づけば、植物の葉を食べるという行為は、植物の植物の生産力を低下させることを意味します。また、糞として土壌に供給されることにより有機物分解は加速します。さらに摂食以外のふるまい、例えばモグラやカニ、ミミズなどの穴を掘ったり、シカなどの樹皮をはいで枯死させたり、これらの行為もまた、生産者と分解者を中心とする炭素循環に多大な影響を与えているとはずです (間接効果)。本研究室では、物質循環の生産者と分解者という2つの柱に消費者という第三の柱を立てるべく、研究活動に取り組んでいます。

「フィールド生態学へのドローンの導入」:無人航空機(ドローン)を用いた生態系構造の測定

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近年、光学センサーの発達にともない、衛星や航空機などを使った地球の観測が盛んにおこなわれています。これらにより、私たちは地球の様子逐一観察することができるようになりました。一方で、これらのデータが私たちの身の回りの自然を的確に表すでしょうか。人間自身が感じとれるスケール観と衛星画像で得られるスケール観には大きなギャップが存在し、なかなか身近の自然を衛星でとらえるということは難しいです。高解像度の空中写真としては航空機による撮影があります。これらは国土地理を中心に行われており、衛星画像よりも詳細な情報を私たちにもたらします。その一方で、時間的制約があります。例えば、台風が通過する直前と直後、紅葉の始まる直前と直後など、細かなタイムスケールの撮影には向いていません。特にフィールドに出て研究を進める方々にとっては、自身の欲しいときの映像がない。タイムスパンが異なるといった問題がよく登ります。これを解決するために近年、発達したドローンの導入を推進しています。ドローンは安価で、自身の好きな時に飛ばしで情報を得るというメリットがあります。これはfieldワーカーにとっては非常に助かります。①ドローンによる撮影技術と撮影された写真の②画像解析技術によって、森林構造の非破壊的測定を行っています。

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